ここ最近、やたらとプログラミング教室の需要が高まっているように思う。将来なりたい職業の上位にゲームクリエイターが入っていることもあるだろうし、これからの世の中プログラムを書ければ未来は明るい、と感じている親御さんも多いと思う。
その気持ちは、よくわかる。
ただ、テキストを渡してその通りに打ち込ませ、用意された絵を動かすことで「プログラミング教えてます」という教室もあるようだ。それだったら、よっぽど独学の方が学びは大きい。ただ書き写して絵が動いたくらいで、なぜ動いたのかを理解できるとは思えない。決して『プログラミング=文字を打ち込むこと』ではない。
ハニホヘトイロに遊びに来てくれて「プログラミングをやってみたい」という子には、まずはScratch(スクラッチ)を勧めている。ぱっと見は低年齢向けっぽいし、画面も地味だ。でも、実は本格的なプログラミングもできることは、案外知られていない。
ブロックを並べるだけ、なのに作れないものがない
Scratchは、ブロックを組み合わせるだけでプログラムが動く。難しいアルファベットをひたすら打ち込む必要はない。ちょっとしたルールさえわかってしまえば、平面の世界において作れないものはないくらい、すぐれた道具だ。
初めてプログラミングをする子には、ジャンケンを作ることをオススメしたい。世界中の誰もが知っていて、しかも勝ち負けが明確に決まるゲームなんて、なかなかない。何百回もやってきたんだから、ルールは熟知しているはずだ。絶対作れる。
……と言いたいところだけど、そう簡単にいかないのがプログラミングの難しいところ。いや、正確に言うと、難しいのは「ルールを言葉に置き換えて、正しい順番に並べること」の方だ。
グーはチョキに勝つ。チョキはパーに勝つ。パーはグーに勝つ。同じなら、あいこ。頭ではわかっている。でも、これをコンピュータにわかる順番で並べるとなると、途端に手が止まる。ここからが本題だ。
文字で書くプログラムは、途中で間違いに気づくと、どこを直せばいいかがわからなくなったり、最悪、全部やり直したりすることがある。でもScratchはブロックを並べるだけだ。間違えたら、そのブロックだけ消したり、付け替えたりすればいい。試して、違ったら戻す。この「戻せる」感覚が、初めての子にはとても大きい。
地味な見た目で、20年も愛されてる理由
このScratch、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボで生まれたものだ。作っているグループの名前が面白くて、「ライフロング・キンダーガーテン」、直訳すると「生涯幼稚園」という。幼稚園の子が積み木やお絵かきで、想像して、作って、見せ合って、また作る。あの遊びながら学ぶ感じを、一生続けられたらいい。そういう思想で作られている。
プロトタイプができたのが2003年ごろ、一般に公開されたのが2007年。来年でちょうど20年になる。プログラミングの道具というのは、数年で古びて新しいものに置き換わっていくことが往々にしてある。そのなかで20年も世界中の子どもに使われ続けているのは、それだけの理由があるからだと思ってる。
リミックスという、真似から始める文化
Scratchには「リミックス」という仕組みがある。
Scratchに公開されている作品は、誰でも中を開けて見ることができる。しかもボタンひとつで、それを自分の作品としてコピーして、好きに改造していい。これがリミックスだ。誰かが作ったシューティングゲームを開けて、敵の動きを速くしてみる。音を変えてみる。自分のキャラに差し替えてみる。それだけで、もう自分の作品になる。
真似することが、後ろめたくない。むしろ推奨されている。ゼロから全部作るのは、大人でもしんどい。でも、動いているものを開けて「なんでこう動くんだろう」と中を覗いて、少しだけいじってみる。この読んで真似して改良する流れが、プログラミングを覚えるうえで一番の近道だったりする。
しかも、リミックスすると元の作者の名前が自動で残る仕組みになっている。誰の作品をもとにしたのかが、ちゃんとたどれる。真似しても、パクリにはならない。敬意を払う文化が、仕組みそのものに組み込まれている。ここがよくできてると思う。
開かれてるからこそ、隣に大人の目がいる
ここまでリミックスのいいところを話してきたけど、一つだけ付け加えておきたいことがある。
Scratchが優れているのは、誰でも作品を公開できて、誰でもそれをリミックスできる、開かれた世界だからだ。ただ、開かれているということは、いろんな作品が並んでいるということでもある。子ども向けに作られた道具ではあるけど、世界中の誰かが投稿したものに、子どもが自由にたどり着ける。中には、ちょっと刺激の強いものや、その子にはまだ早いものに行き当たることも、正直ある。
Scratch側も、コミュニティのルールや通報の仕組みで、危ないものは見つけたら消していく運用をしている。それでも、世界中から投稿が集まる場所を、完全にキレイに保ち続けるのは難しい。
だから、少しだけでも良いから、大人の目を光らせてあげることも大切だ。
なにも禁止して取り上げようって話ではない。「これはダメ」と画面を閉じてしまうんではなく、隣で一緒に見ながら「これはちょっとおすすめしないかな」と言ってあげられる距離感がちょうどいいのかもしれない。
何から始めればいいかわからない、なら
Scratchについては、もう語り尽くされている。検索すればいくらでも解説が出てくる。それでも、いざ「何から始めればいいか」となると、手が止まる人は多い。
だから、もし迷っているなら、まずジャンケンを作ってみてほしい。ルールは知っている。道具は無料だ。間違えても、ブロックを付け替えればいい。それで一本できたら、次は誰かの作品をリミックスしてみる。そうやって、少しずつ世界が広がっていく。
ハニホヘトイロのホームページでも、Scratchについてほんの少しだけ触れている。よかったらコチラものぞいてみてほしい。
そして、途中でわからないことが出てきたら、いつでもハニホヘトイロに遊びに来てほしい。足立区西新井で、子どもがScratchやゲームを作る隣で、親も一緒になにか触っている。そういう場所をやってる。一緒に、ジャンケンの続きから始めよう。