子供にとって、放課後は天国みたいなものだ。友だちと遊んだり、自分の家で好きなことをして過ごせる。
部活や習い事を一生懸命頑張る子もいる。そこから将来の夢が見つかる子もいるし、そうじゃなくたって「目の前のことにひたすらに力を尽くす」ことは、大人になってから急にできるようになることじゃない。なんでも積み重ねが大事だったりする。
その一生懸命を、ひたすら動画を見ることに使ってる子もいるだろう。でも、それだってなにもやらないよりずっと良い。新しいことを学んだり、流行りの配信者のモノマネをして学校で人気者になる。これだってじゅうぶん本人の糧になっている。
「ゲームしてないよな?」と聞かれて、全員していなかった
数日前、SNSで「生徒にはゲームをさせない方針で、『もちろんゲームしてないよな?』と聞いたら全員していなかった」といった主旨の投稿を目にした。どうやら超大手の塾講師らしく、ゲームほど時間を無駄にするものはないらしい。塾名まで出して投稿されていたので、後で怒られてなきゃいいな、といらぬ心配をしていたりする。
聞いた全員が「していない」と答えた、というところが少し引っかかる。本当に一人もやっていなかったのか、それとも先生にそう聞かれて「やってない」と答えただけなのか。子供は大人が望む答えを察するのがうまい。どっちにしても、ゲームが悪者の側に置かれていることだけは伝わってくる。
世の中にはたくさんのエンターテイメントがある。家の中だけでも本や漫画、テレビだけで言えばバラエティやドラマに歌番組、動画にゲーム。ゲームはテレビやパソコン、スマホなど、いろんな種類がある。
本も漫画も映画も「観る側」のエンタメ
本も漫画も映画も不朽の名作だとか、「これだけは読んでおけ!」みたいなものがたくさんある。もちろん実際に観れば心動かされるし、人との会話のタネにもなるし、損することは一つもない。登場人物の誰かに自分を重ねてみたりして、感情移入できるのも楽しみの一つだろう。
ただ、それらはどこまでいっても「観る側」の楽しみ方だ。誰かが作った物語を、決まった順番でなぞっていく。主人公がどんなに困っても、こっちにできることはページをめくることくらいで、結末を変える手立てはない。それはそれで完成された楽しさなのだけど、自分がその世界に入り込めるわけではない。
目の前の剣を抜いてしまった
しかし、ゲームは『自分が主人公』なのである。自分の手で分身となる主人公を操り、敵を倒して心も身体も成長し、世界平和のために悪を滅ぼしたりするのである。しかも、その勇者は「1000年に一度の勇者」だったりするので、もしも自分がその世界に生まれていたら、勇者になれた確率は極めて低い。
なんと都合がいいことに、ゲームは世の中に山ほど存在する。ゲームの数だけ自分は新たな勇者として世界を救うことができるのだ。
ほかにもいろんなゲームがあるので楽しみ方もそれぞれ違うが、一番伝えたいのはゲームが『能動的なエンターテイメント』であるということだ。観るだけでは終わらない。自分で決めて、自分で動かないと、物語は一歩も進まない。
ゲームで子供が学んでいること
「こんな経験、現実じゃできないでしょ」というのが、まずある。
たとえばロールプレイングゲームなら、村に着くと誰かが困っている。畑が魔物に荒らされている、薬の材料が足りない、いなくなった子供を探している。話を聞いて、どこに何があるかを考えて、必要なものを集めてくる。困っている人は誰で、原因はどこにあって、それを解決するには何がいるのか。順番に整理しないと前に進めない。これを子供は遊びながら、勝手にやっている。
戦いの場面だってそうだ。敵が強ければ、装備を見直したり、レベルを上げたり、弱点を探したりする。一度負けても、次はやり方を変えて挑む。失敗して、原因を考えて、やり直す。この「失敗してもいい、もう一回やればいい」という感覚は、ゲームがいちばん自然に教えてくれるものだったりする。テストと違って、ゲームは何度でもコンティニューできる。
持ち物や所持金のやりくりもある。限られたお金で何を買うか、どの道具を残してどれを売るか。これは立派な資源管理だ。複数人でやるゲームなら、誰がどの役割をやるか相談したり、相手の出方を読んだりする。人と力を合わせないと勝てない仕組みになっているものも多い。
ゲームによっては、地名や歴史、生き物の名前を覚えてしまう子もいる。海外で作られたゲームを遊ぶうちに、英単語を自然と読めるようになる子もいる。本人は勉強しているつもりはまったくない。ただ「次に進みたい」「クリアしたい」という気持ちで、勝手に頭を使っている。
考えてみれば、これらは全部、能動的に動いた結果として身についたものだ。観ているだけでは手に入らない。自分で選んで、自分で試して、自分で失敗して、ようやく覚える。無駄な時間だと切り捨てるには、ずいぶん中身が詰まっていると思ってる。
空いてる時間に何をするかは、自分で決める
空いてる時間に何をすべきか、それは自身で決めることだ。いま勉強が必要だ、と思えばした方が良い。いま勉強が必要だけど友だちと遊ぶのを優先した、としてもその時間をリカバリーできるだけの時間を作って勉強できればそれでいいではないか。
同じ様に、どんなエンタメだってゲームだって、好きにやったらいい。たまには世界を救いに行くのも悪くはないものである。