我が家のお手伝いは、フリーミアムモデルにしてある。
フリーミアムというのは、ゲームでよくある「無料で遊べるけど、たくさんガチャしたいなら課金してね」というやつだ。うちの場合は、「決まったお手伝いは無償、追加のお手伝いは1回50円」という形になっている。
毎週日曜日に決められた額をお小遣いとして計上し、子供が引き出したいタイミングで、追加でやったお手伝いの分を上乗せして現金で渡す。
毎日のようにある決まったお手伝いはお金にはならない。本人がやらないと家族みんなが困るから、家事を覚えるだけじゃなく、責任感も一緒に育つと思っている。
追加のお手伝いは、本人がやりたいときにやって報告する形式。欲しいものがあるとき、自分の得意分野で稼ぎたいとき、やりたくないけどお金のため、動機はなんでもいい。親も子もwin-winになる。
お手伝いのメニューはあわせて8つ用意している。そのうち、中2の娘には週4〜5回のゴミ捨て、小5の息子には洗濯物を畳んで所定の場所に置くことを、決まったお手伝いとして割り振っていた。
お手伝いの担当を変えた理由
夏になって、お風呂をシャワーで済ませる日が増えた。加えて子供たちの生活リズムが少しずつズレてきて、洗濯機が回る時間が日によって違うようになった。すると息子は、洗濯物がいつ乾くのかがわからなくなる。洗濯機を回したタイミングを常に把握するか、こまめに洗濯物を触って確認するか。どちらも現実的ではない。
そこで担当替えを提案した。
本当は息子に食器洗いを任せたかった。でも彼は、洗い終わるまで同じ場所に立ち続けるだけで足がムズムズしてくるらしい。小学生男子というのは、同じ場所にじっと立っていられないのだろうか?しかし、それは仕方ない。というわけで、娘に食器洗い、息子にゴミ捨てをスライドすることにした。
引き継ぎという課題
前提が長くなった。ここからが本題。
娘には、息子への引き継ぎをお願いした。何曜日がどのゴミの日か、種類によって何をするか、ゴミはどこから集めて袋はどこから補充するか。この一連の流れを、息子が一人でできるようになるまで教えきったら「引き継ぎ報酬」を渡すとも伝えた。
そして今朝。燃やすゴミの日がやってきた。
まず、娘が起きてこない。夏休みで夜ふかしをして朝起きられず、決まったお手伝いをスキップしてペナルティを何度も受けてきた猛者である。とはいえ、引き継ぎ初日にスキップはさすがに許されない。容赦なく息子が娘を起こしに行く。
そこから引き継ぎが始まった。
「そうじゃない!」「なんでそんなことするの!!」「違うってば!!!」
朝から賑やかな声が家中に響いていた。
引き継ぎがうまくいく順番
娘なりには教えているつもりだが、息子にはうまく伝わっていない。自分が当たり前にできることを人に伝えるのは大人にだって難しい。それでも、うまくいく順番があるはずだ。
まず教える側がやって見せる。一度見せた作業は、次に本人にやらせてみる。似ている作業は、違うところだけを注意点として伝える。全部をイチから説明しようとすると、教わる側は何が重要なのか掴めなくなる。
子供の頃、初めて触れる遊びのルールを教えてもらった時のことを思い出してほしい。デジタルのゲームだけじゃない。校庭や公園での遊びでも、ルールがよくわからないまま参加させられたことはないだろうか?
知らない物事を順序立てて伝えられると理解が早い。逆に、順番がバラバラなまま情報だけ渡されると、聞いた側は混乱するし、同じミスを繰り返す。
娘の教え方が最初から完璧だったわけじゃない。それでも、イライラしながらも「これはこうだから」「さっきのと同じ流れだよ」と、少しずつ順序を意識した言い方に変わっていくのがわかった。教える立場になって初めて、自分がどれだけ何となくで作業をこなせるようになっていたかに気づいたんだと思う。
引き継ぎは、社会に出てからも続く
これは家事の話に見えて、実は社会に出てからもずっと続く話だと思っている。
新人教育も、業務の引き継ぎも、やることは同じだ。まず見せる、次にやらせる、時には違いだけを教える。順序立てて伝えられる人は、教えるのもうまいし、自分の仕事も整理されている。逆に、頭の中にあることをそのまま話す人の説明は、聞く側にとって順番がバラバラで、理解に時間がかかる。
物事を順序立てて考える力は、論理的思考そのものだ。そして、教えるのがうまい人は、たいてい出世も早い。誰かに仕事を任せられる人は、組織の中で信頼される。
娘が必死になって息子にゴミ捨てを教えている今朝の光景は、家庭の中の小さな出来事だ。でも、そこで彼女が身につけようとしているのは、大人になってからも使える力なんだと思っている。
引き継ぎ報酬がいくらになるかは、まだわからない。ただ、報酬以上のものを、彼女はすでに受け取っているんじゃないだろうか。